「お袋――っ!!」
「大変っ、麺が」
『弱っ!!』
驚きでラーメンの麺をノドにつまらせてしまったマツばあに俺の両親と俺が席を立ってどうにかしようと行動に移し始める。
「とりあえず麺を取るんだ!!」
「鼻から!? 口から!?」
『マツばあ! しっかりー!!』
俺達がいそいでどうにかしようとしている頑張っている間に、マツばあはもしかしたら魂が抜けかかっていたかもしれない。いろいろと俺達が試していくうちにマツばぁの顔色が良くなってきたので多分何とかなったんだろうなと思う。そんなこんなで三十分後――
「ふぃー、危うくもう少しで三途の川を渡るところじゃったわ……!!」
どうやらマツばあは臨死体験をしかけていたようだ。俺はこの騒動で中身は老婆なマツばあ相手に、ソファーで休んでいるマツばぁの隣に座って疲れで息を乱していた。
とりあえずこの女の子をマツばあだと認めようとは努力したが、その前に俺だけがマツばあのことを幼女に見えているのかと思い、悩んでいた。そんな俺に母親が声をかけてくる。
「ねー、聖一。このコマーシャルの人、お義母さんにそっくりよねぇ!」
「はぁ!? 全然似てないけど!!」
「えぇーっ、似てるわよぅ!!」
このCMはおばあちゃんの味で「バンザーイ、ナガイキ」との曲で孫と祖母が煮物を喜んで食べようとしうコンセプトだ。俺は母親がこの女の子のことを言っていると思ったので、髪型以外あまり似ていないと理解に苦しんだ。しかし、俺の母親が指さしたのは年を召した高齢の役者さんである。
「もはや本人って感じ?」
俺は母親には『そう見えているのか!?』と思い、俺だけが見えているマツばあとのギャップに少し気持ち悪くなった。
気持ち悪い想像にヨダレを垂らしてしまった俺は慌てて手で隠したが、すでにマツばあに見られていた。
「あれまぁ何じゃそんなにこぼして」
そのおかげでまじまじと見つめてしまったのを気づかれなかったのは良かったのだが。
「待っとれ。今拭いてやるから」
マツばあが着物の袖からハンカチかティッシュを用意しようとしている。
「えっ(嬉しい悲鳴)あっ、やっぱりいいです」
嬉しさを押し殺して俺はやんわりと断った。
「えーから! じっとしてなさい!」
「あ……」
幼女にしか見えないマツばあの顔が近い! 俺はドキッと胸が高なる。俺はマツばあに口の周りを拭いてもらいながら残念な気持ちになった。
“ちゃんとばあちゃん特有の臭いをするんだぁ……っ!!”