(マツばあはやはり老婆らしい……)
俺は認めたくなかったが、入れ歯にばあちゃん特有の臭い……だけならまだしも(?)と考えをまとめる。
“アレは……!!”
テレビで観た高齢の役者のようだと考えているとタメ息しか出なかった。
「もうマツばあに夢なんて見れな……」
そんな残念としか思えないことを何とかしようと考えながらも俺の足は自然とマツばぁの元へ向かっていた。
「い……」
マツばあの寝顔を見たらどうでもいい考えは一気に吹っ飛ぶ。
"あれは婆ちゃん!! 婆ちゃんだ!! けど!! カメラどこだっけぇ――っ!?" マジ妖精さんだよ。俺はカメラを探しに走り出していた。
マツばあがウトウトしかけていた時、聖一の両親が持たせていた電話の子機が鳴った。眠そうな声でマツばあが電話に出る。
「はい……マツですじゃ」
『ばあちゃん? オレオレ!』
「せーいち?」
『そう! 俺せーいち! 実は事故で大怪我しちゃ』
電話の主の声に重ねるようにマツばあは飛び起きて心配をした。
「大ケガ!?」
『それでお金が』
「大丈夫なのか!? 痛くないか!?」
そこへカメラを持って聖一がひょっこり帰ってきた。
「マツばあ?誰と話しているんだ?」
「せーいちとじゃ!! 大変なんじゃ! せーいちが事故で大ケガを……!! せーいちが!! せーいちで!!」
『お金……』
電話の主に騙されて慌てふためいているマツばあは感情移入か混乱のあまり涙を流し続けている。
「せーいちが二人!? はわわわわわ」
聖一の姿を確認して、マツばあは耳の機能が低下しているせいか電話の主の声と本物の聖一の違いがわからず戸惑ってしまっていた。
「聖一は一人ですが!?」