さっぱりええ湯じゃったとマツばあがお風呂に入ってリビングに戻ってくる。
「髪がびしょびしょだぞ? 拭いてやるから」
まずはマツばあの髪にタオルをのせる。
「ちゃんと拭かないと風邪ひくぞー……」
俺はタオルで少し強めにマツばあの髪の毛を拭いていた。
「わわっ、せーいち。もう少し優しくしとくれ」
マツばあはたまたま孫が髪の毛を拭いてくれているということでコミュニケーションをとれた嬉しさからか笑みを浮かべる。
「もー、抜けたら生えてこないんじゃから……」
微妙な空気になったので俺はマツばあに謝るしかなかった。
「……ごめん」
テレビで五十歳代の人が八十歳代の親を介護する苦労というドキュメント番組が流れているのを聖一とマツばあは観ている最中だ。
「明日は我が身と思うとやっぱり…介護は大変ですね。息子達は遠くへ引っ越して連絡取れませんし」
マツばあが番組を観ながらしんみりとしていた。
「……いつかはわしも聖一に介護してもらうのかのう……」
「マツばあ……」
マツばあが具体的な行動を口にしているので俺はそうなった場合の想定をする。
「お風呂に入れてもらったり、ご飯を食べさせてもらったり…………」
俺は悪くないなっ、などと思う。
「悲しいの……」
『いいなあそれ! 超楽しみ』
マツばあの老婆らしいところに目をつむれば幼女にそういうことをしてあげられるのかと俺は想定からいつの間にか脳内妄想に変換してしまっていた。
「楽しっ!? 介護嫌じゃよぉ」
聖一の妄想のせいでマツばあはショックな様子だった。