洗面所で歯磨きしたので俺とマツばあは部屋に戻ろうとしていた。 俺はマツばあが部屋ではない場所に行きそうなので不思議に思う。
「あれ? マツばあの部屋あっちだけど……? また物忘れ?」
俺はマツばあに指を進行方向へ向けて教えてあげた。
「寝る前のトイレじゃ!」
恥ずかしそうにマツばあが答える。
「?? さっきも行っていたのに?」
行ったばかりなのにと俺は謎に思う。
「〜〜っ」
マツばあが不服そうな表情をした。
「もうっ、年を取ると近くなるんじゃよ!」
「……あー……」
言わせるんじゃないといった感じでマツばあがそっぽを向く。
「もうその程度の老婆ステータスじゃ動じないって!」
俺は爽やかな笑顔で部屋に入る直前に『おやすみ』の挨拶をした。
(老婆ステータス?)
挨拶を返したマツばあが疑問に思ったのは言うまでもない。
マツばあが聖一の親所有の家にやって来た次の日、マツばあがスズメの鳴く早朝から俺を誘いにやってくる。
「せーいちっ、起きなさい。一緒にラジオ体操するぞーっ!」
俺はまだ寒い日が続いているので寝床に転がったまま、わがままを言った。
「まだ布団から出たくない……けど! マツばあの体操姿は見たい!!」
「見たい!?」
俺が言った言葉をあまり気にしないようにしてマツばあがラジオ体操のラジカセスイッチを入れる。
「わかっとらんのー、せーいちは…いつまでも若く健康でいるにはラジオ体操が一番なんじゃぞ!」
マツばあのセリフを聞いた俺は真剣な表情をして生つばを飲み込んだ。
“成程……! だからこんなに若く……っ!!”
「何じゃ? 真面目な顔して」