小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 せっかくマツばあがラジオ体操に誘ってくれたのだが、俺は眠気に勝てず二度寝してしまっていた。
「しかしせーいちの部屋は汚いのぅ……」
 寝てしまった聖一を起こしてしまっては悪いのでマツばあはまず部屋の様子を見る。

 散らかっていた机や床のゴミを片付けて簡単に机を拭いてあげたりするマツばあ、ベッドの下もキレイにしてあげた。
「ベッドの下の本もまとめて…と!」
 思春期の少年なr隠し持っている確率の高いあの雑誌をマツばあが机の上に置いた。聖一の読んでいるのは特殊だが。
「この片づいた状態を見たらせーいち、驚くじゃろうな!」
 喜ぶ姿を想像しながマツばあは部屋を後にした。その日の朝、まず彼は絶叫したという。そんなことのあった朝、俺は母親に朝の挨拶をしてから少しビクビクした挙動でマツばあがどこにいるか聞く。
「えっと……マツばあは……?」
「おじいちゃんに挨拶ですって」
 仏壇のある部屋にいると聞いた俺、母親に「朝の日課らしいからあんたも行ってきたら?」と言われたのでふすまを開けた。

「あのー……マツばあ……」
「それでなじいさん」
 俺のじいさんにマツばあが良い報告をしているので聞いていて照れくさい。
「せーいちも良い子でのぅ。流石わしらの孫じゃろう」
 俺が声をかけるタイミングを図っていると――――
「それからじいさんに似て一回りくらい年下の子が好きみたいじゃ、ベッドの下にそんな本が沢山」
 その報告が聞き捨てならなかった俺はふすまを強く開けた。
「その話くわしく!!」

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