小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 なりゆきで俺もマツばあと一緒にお参りしている時、じいさんについて話し出す。
「そういえばせーいちには言ってなかったのぅ…、わしとじーさんは年の差婚だったんじゃ」
 じいちゃんに手を合わせながら、俺はマツばあに話の続きを促した。
「……どこで出会ったんだ?」
 聞かれたマツばあはどことなく照れくさそうである。

「ふふー、出会いはじいさんが17才・わしが5才の頃で神社でのぅ……」
「ハー……」
 俺はマツばあの話を聞きながらも(血は争えないな!!)と感じていた。
おまいりも終わりそうな頃、マツばあが俺の年齢のことを聞いてきた。
「そういえばせーいちも十七歳じゃったのぅ」
 話を振られた俺は心を読まれたような心境になる。
「そういえば俺も(マツばあに一目惚れ)だったな……!!」
 マツばあがどうやらしんみりした心境になっているみたいだ。
「せめてせーいちが成人するまでは生きていたいのぅ……」
 マツばあ! 変なこと言うなよ!!」
 俺は心からの言葉をマツばあに伝えた。

『長生きしてくれよ! マツばあ……!!』
「せーいち……」
 大きな瞳に涙がうっすらと浮かんでいるマツばあに聖一の偽りのない気持ちが伝わっていく。
「軽くあと八十年位生きられるだろ!?」
「……えっ。百五十歳?」
 俺はマツばあの見た目のせいでだんだん元の年を忘れてきていた。

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