小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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「まてよ……? <パパが消す>……人為的に<なくなる>……<盗られる>……!?」
 落ち着いたところで課長が自分の推論を伝える。
「木曜子! 秘密の書類がなくなったのはスパイの仕業だと考えられないか!!」

「成程! さすが課長!勘が冴えてる!かっこいい! 素晴らしい! なんて思い上がるなよ、愚かで無力な存在め。早く白状しろ、このスパイメガネ!!」

「おかしいだろ後ろの方! ツーか何で俺がスパイ!?」

「だって第一発見者があやしいっていうじゃないか」
 課長としては今まで大して働かなかっただろお前とわめくしかない。
「お前がロクに働かないからおのずと俺が第一発見者になっちゃうの!! 何でも!!」
 木曜子は興味なさそうに話題を変える。
「ちぇっ、じゃあ別の方法を考えるとするか」
 木曜子が大声でスパイがいるかもしれないということで交渉を持ちかける。普通なら知り得ないことを叫んだ。

「おーい、スパイ!! そのヒミツ書類と社長の愛人ミレイちゃんのメールアドレス交換しよーぜ!!」
「そんなにこっち側に不利な交換ねーよ!! つーか社長に愛人いること、何できよちゃん知ってんの!?」

 木曜子が情報通かどうかなんて不明とはいえ、会社の上司にあたる人物の弱みを知っていたので課長は、彼女に不安を覚える。
「そんなもんいらないもんねーだ!! やーい」
 途方もなく子どもっぽい行動だが、鷹上がアカンベーをしながらここを後にしようとしていた。
「ちょっと! 何自白してんの、バカスパイ!!」

 部屋のドアを開けて鷹上が去る間際にカバンを開けて何やら紙きれを取り出す。
「ネットに情報がだだ漏れている会社だからどんな大甘セキュリティかと思えば」
≪結局木曜子、お前が原因か≫
「こんな厄介な門番がいたとはね」
 鷹上が上から目線で秘密書類を見せびらかした。管理課課長が探し回っていた資料はすでに盗まれていたのである。
「もっといろんな情報が欲しかったんだけどね、これだけでもよしとするかな」
「それはっ!」

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