小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 翔のクラス、数学の時間。
「計算式とかマジ意味わかんねー……」
(翔様のピンチ! お助けせねば!!)
 俺がわからないことを何とか理解しようと努力しているが、手をこまねいているので無意識な感じでペンを回していた。その行動でアトが、翔の苦しみをなくそうと考える。

「アトがお教えしましょうか?」
「マジで!?頼む!!」
 アトの提案に俺は正直魅力的だと思った。
「了解しました」
 そう返答したアトが完全にロボの機能を活用して計算の丁寧な解説・解答が印刷されている紙を吐き出している。コピー機のような音もしっかり出ていたりするのだ。

※イラスト予定

「ん? 何か機械音が……」
 数学の先生が音のことを気にする。
「どっ、どっかで工事でもしてんだろ!」
 俺はアトがしていることを教科書で隠しながらごまかそうと必死になる。クラスの中で気づいた人もいるだろうが、後でアトが(ピピッと)するだろうなと思った。

 数学の授業を中断させられた腹いせか数学教師が俺に、黒板に書いた問題を解くようにと当ててくる。
「では問い二の答えを……空乃」
「うっ」
 アトは翔の事を助けてあげたい。
(はあぁ、再び翔様のピンチ)
 俺は教科書の計算解説ページを見直したりしてあがきはした。しかし……
(急にフラレてもわかんねーよ、やべぇ、どうし……)

 翔に答えを伝えようとアトがレーザーで教科書に答えの焼き痕を作った。俺の頬に軽い火傷が残ってしまったが答えられるのは助かる(と思うしかないというか)、ただ二と四分の三DEATHの『DEATH』にわずかでも殺意があったのではと勘ぐってしまう。
「二と四分の√三(ルート三)……です」
「おぉ、正解だ」
 数学教師が少し驚いた声を出しているのでなかなかの難問だったのだろう。アトが隣の席でグッド的ポーズをしているが頬の火傷について俺はアトに文句を言おうと考えた。

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