小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 ある日、幽霊ちゃんは橋爪剛の部屋の郵便物に不幸の手紙が入っているのを発見した。文面はやはり「この手紙を受け取った人は十日以内に同じ手紙を十人に出さないと不幸になります」と書いてあった。
「!!」
「人の郵便物を勝手に見るな」
 俺は彼女の行動を呆れながら注意する。
「ほかのやつに送らないと不幸になるわよ!!」わざわざ幽霊ちゃんが俺の元に持ってきたが俺的にはどうでも良かった。
「不幸の手紙……?」
 こういうのは相手しなくてもいいのに俺の友人の一人はどうしても不安になって送ることにしたんだろう。そいつは悪い奴じゃないから後日笑い話にすればいいかと破り捨てる。

「バカらしい」
 躊躇なく手紙を破り捨てる様に幽霊ちゃんは彼に胸キュンしてしまっていた。


 剛に憑いてから数日、幽霊ちゃんは彼の食事にイタズラをしようと目論む。
「ズ太い神経のあいつだってゴ……(黒または茶色い悪魔)がご飯に入っていたら驚くハズ……!! 普通なら食欲失せるだろうしね」
 Gにとっては勝手に浮いているのだからもがくしかなかった。

「でもちょっとかわいそうかなぁ…………」
 彼女は悪魔と称される虫を部屋の端に投げ捨てて、野菜の入っている小型冷蔵庫などからいろんな野菜を出していた。
「じゃあイヤがらせにキムチとか!かっ…辛すぎるのもかわいそうだから砂糖も……!」 
 俺がいるのに幽霊ちゃんがいろいろしているのでむしろ微笑む。
(何かかわいいな……)
 どったんばったんと目まぐるしく動き回る彼女、結局は料理を作ろうとしているみたいだった。

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