小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 ある日のこと、俺はFAXを使用する機会があるので便利だと思い、FA付きの固定電話を買った。結構早くそれを教えた誰かが電話してきたかもと思い、電話音が鳴ったので受話器をとる。
「もしもし」
『私メリーさん、今あなたのお家の近くにいるの』
 人の恐怖を煽るような忍び笑いを出した機械的な女性の声が聞こえてくる。怪談など(都市伝説)では最後は死亡フラグな気もするが俺の対応は違った。

「よしっ、夜道は危ないから気を付けて来いよ」
 メリーさんにとってその返しは予想外だったようである。
「!!?」
 それから十分前後、俺は幽霊ちゃんとくるはずのない者を待っていた。

「夕食三人分用意したのになあ……」
「ねえ? 迷ってるのかなあ……」
 幽霊ちゃんはメリーさんの怪談話を知らないようだ。とりあえず俺はお客さんが来る予定だからと彼女を待たせていた。


「ただいま」
 最近は幽霊ちゃんが何かをしてきたり(話しかけてくるとか)してくれていたので静かな室内が気になる。少し前は当たり前の日常だったのに。
「成仏……したのかな」

 電気のスイッチをつけた時に俺はカギを落としてしまう。カギがベッドの方まで転がっていってしまった。
「おっと、鍵が……」
 鍵を取るために俺はベッドの下をのぞきこんで鍵に手を伸ばす。 ベッドの下に幽霊ちゃんが潜んでいた。


 それを見た俺は、黙ってちゃぶ台に行き、あぐらをかいた。
「お……脅かそうと思っただけなのにぃ…」
 幽霊ちゃん的に俺の雰囲気が不機嫌に感じたようで困っているようである。
「アンタがいない部屋は」
 少しぐずった彼女が俺の言葉に反応した。
「広いな」
 俺の横に座ったと思われる幽霊ちゃんを極力気にしないような感じで俺は独白する。
「帰りにケーキ買ってきたんだ。食うか?」
『途中で事故って死ねばよかったのに…』
 幽霊ちゃんの決まり文句みたいになっているセリフを俺は軽く受け流した。
「はいはい」


「あんまり慌てて食うな」
 幽霊ちゃんのほっぺたにクリームがついているのに気づく
「生クリームついてる」
 彼女のほっぺたについていた生クリームを俺が指で取ってなめる。その行動は彼女にとって恥ずかしいことのようだった。

「何してんのよっ」といった感じで俺に文句をつけてくる幽霊ちゃん。俺は彼女が恥ずかしがっている理由がわからないので首をかしげた。
 その時、ヒトダマちゃんは思った。
(そのくっせえ言動の方がオバケよりよっぽど怖ぇっつーの)


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