小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 ディーアは魔法担当。しかし、今のそこまで魔法が必要ではない現状では副業の占いの方にお客さんがよく来店してくる。十人前後並んでいることが多いので盛況といえるだろう。当たるからこそ並ぶのだろうが。
「もっと運回復の食料品……今日のおすすめパンケーキ三十ゴールド」
 占いが当たるのでそんな文句を言う人はいないが、たまに疑問を聞いてくる人はいる。
「あのー、昨日はおにぎりだったんですけど…一昨日はサンドイッチ」
 ディーアがお客さんへの対応での返答は大抵同じ。
「偶然って結構ありますよね」
 いろんなお客さんにバレない感じに上手く占っているのでディーアとルートが実はグルだと気づけないのである。

 たまにビーメのお店にやってくる、だいたいどこかに傷を負っているさすらいの剣士風の男。さすらって五年以上経っているのか三十代くらいのスーテンという名の剣士だ。彼が来たときは独特の雰囲気があるのですぐに気づく(ちなみにこの街には三ヶ月に一回位の割合で戻ってくる)

 そして重度の武器オタクだったりする。購入前から終始笑顔でやりたいことをしていくのは、もういつものこと。武器屋関連情報網で有名な人物だという事実がある。
「お客さーん、武器にほおずりは困ります」
 どの街でもやることは同じだと武器屋連合でビーメは聞いていたが、何も言わないと本当にやりたい放題のようである。
「勝手に手入れもやめていただけますか………言いたくないのですがお帰りください」
 武器購入機会の多いお客さんだからこそ邪険に出来ない。しかし、手入れまで始めると買わないサインと武器屋連合から聞いているのでビーメは毅然とした態度をとった。

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