小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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「こちらでお召し上がりになるポン?」
「まいどありー、ここで装備していくかい?」
ディーアは接客が得意という訳でもないのでルートの食料品屋や武器防具屋を観察して自分のものにしようとしていた。
「すみませーん。この強力破壊魔法ひとつくださいな」
 若い女性魔導士が魔法薬をお買い求めに来る。女性魔導士なのでもしかしたら魔法で若作りしているのかもしれないがそれは別のお話。

「ここでブッぱなしていきますか…?」
 ディーアの物騒な言動に女魔導士は困る。ビーメとルートの否定の言葉が一致したのは言うまでもない。
「いえいえ、テイクアウトで」
 ディーアの思いつきには困ったものである。

ルートの食料品店などにたまにはクレームもある。アクセサリー屋のエデルに文句付けられても困るだけなので(その時たまたまエデルが足りなくなった食品補充でルートに食品を渡す手伝いをしているところだった)彼はルートを呼ぶ。食堂に響くけばけばしい声で声通りなイメージのパーマで厚化粧なマダムっぽい人が文句を言ってくる。
「アンタね、店長は。毛が食事に混ざる可能性あるでしょ、その耳を隠してくださらないっ!!」
「は、はい!!ポン」
 
 マダムっぽい人のかん高い声に若干引き気味になりながらこれから耳を隠そうか検討するルート、そこに別のお客さんから横やりが入った。
「そんなの駄目だ!!せっかくのチャームポイントを隠すなんてもったいない!!」
 バンダナでメガネをかけた少しポッチャリ体型の痛(いた)シャツを着ているオタクを誇っているかのような人物二十歳くらい(?)の意見にルートは困る。
「こいつはどうしたらいいんだ・・・!?」
 真面目さも強いルートは悩んでしまった。そこにサカエが助け舟を出す。
「後者を無視すれば良いんじゃないか?」
 ディーアもその一連の流れを聞いているようだが口を出す気がなさそうである。

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