小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 アクセサリー屋専門の鍛冶工房でエデルが作業している。元ビーメの武器防具屋副店長だったという過去もある。それ(癖)を出さないように宝石=素材を打っていた。
「たまにはピアスでも作るか。成功する、成功する」
 自己暗示で数年前の武器防具屋で武器と防具を作っていたのを忘れてなりたかったアクセサリー職人として、アクセサリーを作ろうとしているのだが完成品を見てエデルは固まる。それは短剣作成になってしまっていた。救いがあるとすれば柄の部分にピアス穴がついていることくらいである。

「…ついつい今までの癖が。習慣って怖いねえ」
 エデルがなかなか成功せずに落ち込んでいると、筋肉質な手で誰かがエデルの肩に手をおく。
「……慰めているのか馬鹿にしているのかどっちだい?」
 さすらってこの工房に入り込んできた(工房のドアは開いていたが)スーテンが耳に短剣ピアスをつけて良い表情をしていた。「耳、伸びてるよ」とエデルが教えてあげたが、この剣士は自分の世界に入ってしまって聞こえていないようだ。

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