小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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  『アールのハットショップ』

 村の外れにある家の近くに大きな木がそびえ立っており、村までの道のりが整備された草原に建っている帽子屋さんがありました。のどかな雰囲気のこの家をお店にしており、不思議な帽子を作っている男の子アールがいます。

 帽子なのだから被れば良いだけのはずですが、彼は帽子に人の役に立つ何かを仕込んでおくのが好きでオリジナリティあふれるその帽子が売れたらと想像しています。もちろん仕込みなので失敗して爆発のような音が立ったり、店の中が散らかってしまうのも日常茶飯事な光景である。

 ある日、アールのお店にやってきたのはニャーちゃん(猫)でした。お店の出入口を営業中は開けてあるので、たまには動物が入ってくることがあるのだ。ニャーちゃんは雑種なようなので正確な猫種はわからない。ニャーちゃんの気持ちが知りたいと思ったので、猫の心がテレパシーのような感じで伝わる帽子作りのために手を動かしていた。

 そして完成した帽子でニャーちゃんの気持ちを聞けるか試してみると(高くて買えないネコ缶が食べてみたいな〜)というアールが叶えられそうにない気持ちが聞こえた気がしましたが帽子の調整をするフリをしてスルーで難を逃れる。

 猫の気持ちがテレパシーのように伝わるこの帽子には改良の余地があったようです。猫と同じ気持ちがあるので、窓際の温かい場所で日なたぼっこしながらうたた寝をしてしまいました。他にも熱いものが苦手になってしまうので一休みのためにお茶を入れても飲めなくなってしまう。
(どうしよう、飲みたいのに飲めないぞ)
 アールは悩みましたが、別に彼の意識がどうにかなっているわけでもないので帽子をぬげばいいだけだったりする。それに気づかないアールであった。

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