小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 ときどきアールのお店にいろんな帽子があるので買いに来たり、ただ見に来たりしてくれているお客さんがいます。今日も一日頑張ろうと考えながら店の開店の準備をしようとドアを開けるとその常連さんが待っていました。
「さっき来たばかりだから気にしないで。それより―――」
 常連の十才くらいの女の子がアールに頼み事をしにきたことを言う。話を聞いて帽子の依頼をされたアール。思わず女の子から見えないように感涙してしまった。帽子のお願い(依頼)をした女の子が不思議がるのも無理はない。


 気を取り直して女の子にお願いされた帽子をアールは作ることを快諾する、それに必要な注文表にサインをしてもらう。
「それでどんな帽子を作ればいいですか?」
「笑わないで聞いてね?私、空を飛べたらなーって思うの」
「あははっ、ユニークな発想だね」
「もうっ、笑わないでって言ったのに」
「ごめんごめん、笑ったお詫びに出来るだけ期待に応えるから」
 
 女の子=ノリちゃんの夢を叶えてあげたい一心で初めて空を飛べる帽子作成を納得の出来る感じになるまで努力して作り続けている。ノリちゃんの喜ぶ姿を見るためにも妥協したくありません。スズメをモチーフにした羽の動きがしっかり再現出来たと思われる帽子が完成する。ノリちゃんに連絡して帽子の試着をしてもらいました。残念ながら一瞬浮いた浮かないくらいの出来であった。とはいえ、人を一人飛ばすのは科学的に難しいことなのでこの帽子で浮いた気がしたのはすごいのかもしれない。

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