「イナール、負けないでー!」
スネクンに巻きつかれて強力な力で締め付けられたが、イナールには効かない。実力差がありすぎるのだ。イナールがされるがままになっていたのは自分をここへ投げたサンの有り得なさを嘆いていたからに他ならない。
「必殺技よ」
別にサンの声に同調したつもりはない。ただ、いつまでもスネクンに好き勝手させるのが腹立たしかったからだ。ユニコーンの角でスネクンを遠くへ突き飛ばした。
「ホーリーラーンス!」
サンは小鳥達の元気な姿を見て安心する。
(良かったね、ヒナ鳥たち)
しかし、その小鳥も魔獣の子ども達ピッピィーだった。小鳥の豹変ぶりにサンは後悔の言葉も言葉にならず、イナールはその小鳥の群れに襲われていた。彼女は小鳥魔獣ピッピィーの巣から落ちてきたイナールを受け止め、イナールに償いを約束する。
この街には旅人のための酒場がある。旅人が自由に情報交換できる場で旅人のための食堂を兼業している。旅人には未成年も多いのでこの街は「酒場」といってもいろいろなメニューがあるのだ。情報を教えてもらえるし、旅の目的を深く詮索しないのが礼儀なので利用者も多い。
「イナール、眠い?戦い疲れちゃったかな。寝てていいよ、でもどこで待ってる?」
サンが情報収集している間、イナールはどこにいるのかを尋ねる。
「え?あそこがいーい?」
イナールは何かの匂いに気づくと、眠気が吹き飛んでサンへその場所に連れていくように匂いがする側に動いて知らせた。
酒場の暗い一角…顔に傷があったり、大剣を背中に担いでいたり隙のない戦士などが人目を避けるようにた佇(たたず)む。屈強な男達が集まって何かを待っている雰囲気。イナールは彼らと同じ匂いを感じていた。
「おとなしく待っててね〜」