これはある日の登校時間の話。ゆかりがいつもの通学路で真坂を待っていた。真坂は謝りながらも急いでゆかりの所へ走ってくる。
「おはよう、ゆかりちゃん。ごめん、遅れた」
真坂に悪気はなさそうな感じだが、ゆかりは少しだけ怒っていた。
「遅いわよ、真坂」
それで少しでも怒りを沈めたゆかりが真坂の手を気にする。何でか包帯を巻いているのだから気になって当然だ。
「あんた、その手はどうしたの?」
「え??」
真坂が恥ずかしそうにあいまいな笑みを浮かべてごまかし始める。
「いゃあ、目覚まし時計でちょっとねー」
(目覚まし時計!?)
どうも話がつかめないゆかり、一体何がと思ってしまった。
朝から詳しい話を聞いたゆかりはビックリする。簡単に説明するとこうだ。真坂がいつもの起床時間に目覚まし時計が鳴った。真坂はいつもより眠かったのか、寝ぼけまなこで、しかし止める力はある程度入ってしまったようである。「後5分」と止めに行ったうさぎ型目覚まし度時計の耳(とんがっている)に手の平を強打する。
「止め損なっただけじゃなくて痛みで目が冴えたよ〜」
朝から痛い思いをした真坂、もう笑い話にするしかないと顔が笑顔になっている。ゆかりは口に出さずとも思わずにいられなかった。
(指で止めろよ)