小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 この殻阿中学校では手洗い・うがいを励行している。食事後のエチケットだということで学校の規則に決められているのだ。ある日、真坂が手洗い場でうがいをしていると不穏な影が………………

 音もなく、足音を殺して近づいてきたゆかりにわきばらをこづかれる。
「がふぁっ!?」
 いきなりだったことと、わきばらに響いた痛みに真坂は水を吐き出してしまった。
「い……いきなり何すんのよ!?」
 ゆかりに怒りたい真坂ではあったが、苦しさでむせが止まらないので彼女に怒りが伝わっている感が六割くらいしかない。

「いゃあ」
 彼女は悪びれもせずにのたまう。
「『がふぁ!?』って言うかなーと思って」
 思い通りの行動をした真坂にゆかりは笑いが止まらない。
(試すなよ)
 ゆかりの行動に怨念を発している真坂を気にしないゆかりであった。


この中学校恒例のうがいの時間、真坂は何日かゆかりを観察してお返しのチャンスをうかがっていた。チャンスを感じた真坂は――
「うりゃあ!!」
 ウキウキした声で油断していたゆかりのわきばらを真坂はこづき返す。その反動でゆかりが歯磨き粉を含んだまま水を飲み込んでしまった。

「飲んじゃった――!!」
 さすがにそこまでする気がなかった真坂はオロオロする。ゆかりに何倍もの報復をされてしまいそうと考えると怖くて汗が吹き出した。

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