『オカン』
ある日中学二年生の俺が寝ていた朝、オカンがいつも起こす声だが幼い声が聞こえたので幻聴だと思って(弟や妹いないし)もうひと眠りしようとする。
「アツシー!アツシ起きや―――!!」
まだ聞こえてくるが夢に違いないと俺は起きる気がしない。
「遅刻すんでー!!はよ起きやー!!」
あまりに近くから声が聞こえてくるので半分眠っている状態な感じで目を覚ました。
「ってゆーか見てー!!」
俺が見たのはオカンの服を着た小学生(!?)だった。
「かーちゃん、十才になってもうた!!」
「え」
改めて言っておくが俺には妹はいない。いたとしてもこんな妹を認めたくない。絶句するのもわかるだろう?
「何で十才に!?」
信じたわけではないが、一応聞かずにはいられない俺の心境を分かって欲しい。
「知らんわ!!はよ食べ!!」
見た目は小学生だが、オカンと同じ和食にハムエッグを用意してくれている女の子。
「目覚めたらこんなんになってたんじゃ!どーすんねん!!」
女の子の剣幕に俺は口を出せない。
「こんなんなってもーたらパートにも行かれへんやんけ!!」
半信半疑の俺の視線に気づいたのか、女の子が言葉を続ける。
「おっ、アツシ。信じてないんか!?」
女の子が自己主張するように駆け寄ってきた。
「かあちゃんや!!アツシ!あんた三才までかーちゃんの吸うとったやんけ」
「行ってきます」
微妙な空気に耐えられなくなって俺は逃げるように登校することにした。