小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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(昨日まで普通のオカンだったのに…)
 さっきまでのありえない光景に親友の呼び声に気付かなかった俺、いつものオカンのことを考えてしまっていた。ヒョウ柄Tシャツにスパッツの姿で少しウザイけど俺のことを考えてくれているオカン・パーマの癖が目立った…典型的なオカンだったのに…と思い出していた俺はオカンが寝そべってスナック菓子を食べている姿脳裏に浮かべる。それが何で女の子になっているか訳が分からない。
「おい!」
 親友から現実世界に戻される強い少し困惑の入った声がかかる。
「アツシ!!悩み事でもあるのか!?」
「い〜や!」
 親友が肩を叩いて心配してくれたが、問題ないことを強調するかのごとく、不自然なくらいの笑顔で親友を安心させるのだった
“言えるわけねーよな”

「アツシ…今日何か暗くないか?」
「そうか?」
 親友にわかられてしまわないように疑問を疑問で返した俺、親友は釈然としない様子ではあったがそれ以上追求してこなかった。
「おはよー!」
 華やかに素敵な笑顔で級友の女の子の方から挨拶してきてくれる。
「おう菜花」
「あっ、おはよ」
 俺は菜花さんのことを素敵に思っているので顔が赤みがかっているのを隠す感じで親友の斜め後ろ辺りから挨拶を返す。
「里山クン、元気ないね」
 気になる女の子から声をかけられて悪い気がしない俺、心配をかけたくないのでいつもどおりの仕草を見せた。
「いや、そんなことあらへんよ」
「アツシ―――!!」
 どこからともなく聞き覚えのある女の子の声が聞こえたかと思ったら、中学校の正門に自転車で待っていた。無理して自転車で来たのか高さが合っていないのでプルプルしている。
「弁当忘れてたで」
 その姿に俺は言葉も出ない。

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