小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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「あ、ありがと…」
 この女の子についてどう説明していいかわからない俺は、弁当を持ってきたお礼を言いつつも顔は青ざめていたと思う。
「里山クンって妹さんおったんやね!かわええやん」
 菜花さんは子供の扱いに慣れているのか、(信じられないことに俺のオカンな)女の子に人懐こしさがある笑顔で語りかけた。オカンは菜花さんに(何やねん、こいつ。アツシのことを好いているなら挨拶の一つでもしたらどうや)といった気[オーラ]を発している。
“い・・・今・・・何かものすごい殺気を感じたんやけど”
 菜花さんが引いているうちにオカン(?)は帰っていった。
「ほんなら!」
 俺は何余計な真似してくれとんのやと思った。

 オカンが十才になって二日目―― 俺はオカンがあまり変化していないのを見て飯がなかなか進まない。
「おとーん!!ホンマやねんて!!」
 オカン(?)が海外出張中のオトンに電話しているが信じろという方が無理というものだろう。 三日目は日曜日で学校が休み、オカンだと本人が主張している女の子がほうじ茶と煎餅を用意して韓流ドラマを観ている。確かに行動はオカンそっくりではあるのだが。
 
 四日目――オカンは中学の女子と同じくらいの背格好になっていた。こんな状態で同年代になったオカンと一緒の生活は気まずい俺、オカン(?)が気づいたことを話しかけてくる。
「アツシ、さっき気づいてんけど」
 その後にもったいぶるオカン。。俺が黙っていると面白くなさそうにしながらも話を続けてくれた。
「かーちゃん…一日ごとに一才年とっとるみたいやねん」
 そんなこと言われても俺はどう対応していいかわからない。



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