小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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          『セッツン』

 知識欲が多そうでいつも眠そうな目をしつつ、本を読んでいるイメージしかないカンナさん。今日も新しく購入してきた本を読もうとしているところである。 その彼女が大学の同期なポニーテールで背の高いルゥという友人に、文庫本につけてもらっていた輪ゴムを飛ばしていた。
「輪ゴムでっぽー」
「!! あう゛っ」
 彼女は楽しくなってきたのかルゥにまた輪ゴムを当てた。見ていて外しているのを確認できなかったので命中率百%という凄すぎる特技(?)だ。
「スキあり!!隙だらけだがね」
「!! またっ」
 さすがに何度も当てられていれば仮に痛くないような飛ばし方をしていても怒るだろう、ルゥがカンナにやめるように説得を始める。
「もうっ、輪ゴム遊び禁止っっ! あたったらいたいでしょ!」
 カンナが不満そうに「えー」と言っている。主人公の男高校生は遊んでいなさそうな人でも、意外と遊んでいるんだなと思った。

 この話には誰もがほっとけない美男子がいる。学校内で彼を嫌いな生徒はいないはずだ。名前はライグ、学校が終わって夜になると正義の忍者。だが家に帰るとヲタクの本性が出てくる。なかなか入手できなかったレアももアニメフィギュアに言葉も出ないくらいで嬉しさを隠さずにいられない。しかしその実態は貧乏。テレビだけは何とか部屋にあるが、後はダンボール箱内に漫画やアニメグッズに散財している現状が見たとしたらわかる現状である。 もやしだけのインスタントラーメンでもぜいたくな方だと思うくらいに。

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