小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 ある日、僕はバイト先に急いでいた。名乗り遅れたが僕の名前は弾(だん)、カンナさんとルゥさんを紹介したのも僕である。
(急がないと遅刻しそうだ!!)
 通り過ぎようとした時、新装開店の美容室のティッシュを目の前に差し出された。
「どーぞー」
「あ、スイマセン」
 今度はパチンコ店のティッシュ配りさんからもらう。
「よろしくお願いしまーす」
 
 急ごうとしているのに手元に差し出されると弾は断れなかった。
「あっ、はい」
 駅前で業種が違うとはいえ、ティッシュを配っている人が多いことに気づいた弾。(またもらっちゃったよ)と思っているうちにまた・・・
「どーぞー」
 バイト先につくまでにコンビニ袋(小)にいっぱいティッシュが入るくらいの量をもらっていた。

「どうしたんですか、その荷物…」
 町内の治安を清掃活動しながら守る仕事のお偉いさんに驚かれて僕は照れを隠せない。
「ティッシュ、いりませんか?」
 袋からポケットティッシュを取り出して手渡そうとする弾であった(いくら断れない男とはいえ、もらいすぎたし)

 雪津保安課社長・ルゥさん、年齢不詳だったりする。
「カンナさーん、ルゥさんっていくつくらいだと思います?」
 バイトの休憩時間にカンナさんに聞いてみた。はたから見ていても彼らはよく一緒に行動しているからだ。ちなみに大学の同期と聞いたことがある気もするがどうも同じ年齢には思えない、大学って何歳でも入学可能だしね。

「ん―――― ……わかんない」
 カンナさんに聞いても意味がなかったかもしれない、興味がなさそうだ。カンナ自身は心中で(俺がこいつと出会った時から見た目変わらないし)と思っていることを想定するともう中年の域に入っているのだろうか?
 
 ルゥ社長の年齢が気になる弾、お茶派だとかいろいろと総合して考えの中だけで結論を出す。
(やっぱり結構年いっているのかな)
 仕事の報告メールを見ても何だかオヤジっぽいしな〜と思う弾だった。

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