小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 俺が彼の話に興味を持ったからなのか、ごく自然に俺が学校に登校しようとしているのについてくる悪魔に文化系があるかどうか不明だが体の線が細い悪魔の少年。せっかくなので話だけでも聞いておこうと思う。
「それじゃ仮に寿命を百年伸ばしてって〜のはどのくらい命が必要なの?」
 彼は聞かれたことが素直に嬉しかlったようだ。『願いを叶えさせてもらえるのかもしれない』と考えたのかもしれないがそう言い出せる雰囲気ではない。
「おっ、そうきたか」
  透き通るような優しい声色で悪魔の少年(声が可愛らしいな、おい)に憶測でモノを言われたが、そのとおりな部分も多いので俺は黙って彼の説明を聞いていた。
「ふむ…どうせ百年伸びた寿命で百個の願いを叶えようというセコイ考えだな」
 その後に少年かどうか自信がなくなってきた、な悪魔の少年はシレッとした口調でとんでもないことを口にする。
「ちなみに見積は必要寿命百五十年だ」
『マイナス五十年じゃねーか』
 
 俺は本末転倒なので驚きで叫びに近い声を発さずにはいられない。悪魔の少年はどうやら願いを叶えられる自信がないようである。
「苦手なのだ、寿命をのばすのは…」
「お前の実力のせいかよ!」
 いちいち仕草にまで可愛らしい印象を感じることのある悪魔の少年は落ちこぼれっぽい気がした。

 悪魔の少年は聞いてもいないのに照れ隠しをしたいのか、悪魔の願いについて語り始める。
「あ……悪魔にだって得手不得手はある…本来は願いの種類に合わせた悪魔を呼び出すものだからな」
 悪魔の少年にも言い分はあるみたいだ、でも俺にそんなことを言われてもそんな反論されてもなという心境だ。
「だからそもそもお門違いの願いをするほうが悪い」
 悪魔の少年は俺を指さして俺に責任を押し付けようとしてきた。

「そんなん知るかよ、お前が勝手に来たんじゃないか!」
 痛いところを疲れたという感じの悪魔の少年
「うっ」
 上目遣いで涙目な悪魔の少年(こいつは男のはず、ドキドキするな、俺)は涙をこらえている様子ではあるが、頬が濡れているのでこらえきれていないようである。辛い境遇を思い出してしまったのかもしれない。
「…だ……誰も呼んでくれないから…」

(駄目だこの悪魔・・・・・・・・・)
 全く同情の余地がないわけではないが、やるべきこともまともにできない悪魔じゃなと俺はため息をもらさずにいられなかった。

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