小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 わっちは神だからして絵馬を見る権利はある。絵馬に書かれている願いで叶えられそうなものを選択する。
「う〜ん……他に叶えられそうな願い事はないかな……」
 いろんな絵馬を見ているうちにわっちは良さげな願い事に気がついた。
「何? 高校に合格できますよーに? これは学力に不安があるってコト? なーんだ、それなら簡単やん!!」
 その絵馬を書いた無要 領君。名前通り勉強していても要領がよくないので成績が思わしくない。

「あ〜っ、テスト最悪だったなちくしょー。ん? なんだぁポストがぱんぱん……」
 ぼやいていた無要がポストに異様に入っていた通信教育ゼミや塾のチラシ(または案内手紙)しか入っていなかったので言葉も出ない。土地神さまの神力の弱体化は深刻なようだ。


 ある日わっちが賽銭箱の管理をしに行くと大量の葉っぱが入り込んでいて残念な気持ちになる。
「ぬあっっ、何じゃこりゃ――!! 賽銭箱が葉っぱまみれ!!」
 近所の悪ガキの仕業だったら懲らしめようとわっちは草むらに隠れて様子をうかがうことにする。しばらくしてこっそりとこの場に来た何やら人間の手とは違う小さな手が見えた。

「お母さんのケガが早く治りますように……」
 どうやら子ぎつねが人間のマネをして両手を合わせているようだ。
(今度お見舞いに行ってみよーか――……)
 わっちは自分を頼ってくれた子ぎつねに心が洗われる。

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