小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 どちらかといえば自然が残っていてキツネの親子などが生息しているわっちが土地神をしている地域、わっちが街の様子を見てみると若者が変わった服装をしているのが目につく。
「最近はわざと破ったり汚した服がオシャレなのか……時代も変わったものだなぁ〜」
わっちが見たものは都会で流行しているビンテージなるものらしい。実際は都会で流行はすでに変化しているがこの地域では最先端だ。

「新しい服欲しいとか思ったけど……なかなかこの服もイケているのかもね!!」
 わっちは昔からの服なので当然服を何回変えたいと思ったことか。しかし古い服が流行ってよかったとは思う。服がボロボロだけど心は錦と考えていたわっち、その分苦労とともにこの服に愛着は強いもののむなしさは隠せなかった。

 この地域の食堂にて、食堂の店主は裏口のゴミ捨て場で猫達があさろうとしているのを見つけた店主。ゴミ箱は裏口のドアの後ろに置くことにして猫の食べる魚の余りをあげるのが日課になっていた。
「おやおや……また来たのかお前達。お腹空かせているんだな、さぁお食べ」
 店主が気づいたのは猫の「ニャーニャー」という鳴き声が聞こえたからである。

 次の日、何日か猫のご飯をあげていて猫の鳴き声が楽しみになってきている店主はすぐに窓を開けるところだった。
「おうおう、ちょっと待て。今出るぞ」
 窓を開けて猫にご飯をあげようとした店主が見たものは猫っぽい姿に変装したウチココヅチだった。
「さぁ、お食…………」
 店主は何も見なかったことにして窓を閉めた。ウチココヅチは自信があったので悲しい気持ちが強くなる。猫達にとってはいい迷惑かもしれない。

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