『おじたん、あっちいけ〜』
ある日ある時の和の国。その国にある寺でこの寺の和尚さんが養っている子ども達と源気(和尚さんの弟子)が軒下をのぞいていた。それに気づいた和尚さんも一緒にのぞいてみると小さな子どもが捨てられているのを発見した。つい最近まで戦が続いていたので村や町あたりから焼け出されてしまったのかもしれない。服に小次郎と書かれている刺繍があったので名前だけはわかった。この寺にいるものはみんな似た境遇である。
「君はどこの子だね?」
見たところ四・五才といった感じだ。話す気力もないのかこの子は視線だけで訴えかけている。
「随分と飢えているようだな」
やはりこういった境遇の子どもは空腹のままこの寺へ方っておかれたのであろう。小次郎とあまり年の変わらない子達数人が彼のことを興味持っている。
「おおい、源気」
この小次郎という幼子に何か食べさせてあげようと和尚さんが弟子の源気を呼ぶ。
「うるせえな、おととい来やがれ!」
いつも和尚さんに雑用ばかりさせられている二十代半ばくらいの坊さんは良く悪態をついている。今日も床掃除の後に庭掃除をさせられている源気は疲れているのだ。
「あっ、あいつめ」
そんな弟子の扱いにも慣れている和尚さん、小次郎はビックリしているが、他の子達はいつもの日常風景なようで気にしていない様子である。
「お前がおととい来やがれ!!」
和尚さんがまるでケンカを売るように言い返す。
「何だと――――!!!」
「来た来た」
庭掃除を投げ出して文句を付けに来た坊さん、和尚さんはいつもその後は弟子を丸め込んでいるのだった。 それから掃除はほとんど終わっている感じだったので和尚さんは源気に簡単な食事を命じるのであった。