今日は和尚さんと小次郎、それに源気が町に用があるので出かけるところだった。
「じゃあ先に行っているぞ、源気」
「おうっ」
源気には和尚さんに頼まれたヤボ用がある。それをすぐにすませて彼は後を追う。
「あっ、おじたんきた。まつ?」
寺から町に続く一本道で小次郎が源気の姿を見つけたので和尚さんに聞いた。
「いや、すぐに追いついてくるだろう」
しばらく歩いて(小次郎は和尚さんにおんぶしてもらっているが)ふと後ろを振り向いてみたが源気の姿が見えなくなっている。
「あれっ? おじたんいなくなったよ」
「まったく仕方のないやつだ。じゃあ今頃はあの辺の森を走っているに違いない」
和尚さんは源気の性格を知っているので、彼の大人げない行動に呆れている。
(先回りだー!!)
和尚さんの考え通り、源気が先回りしている。一番になりたいという子どもじみた気持ちが残ってしまっているのであろう。
和尚さんが少し前に洋の国からもらったという回転机と頂きもののお団子で源気が小次郎で遊んでいる。
「ほーら、コジー。回転机だー!! 団子が取れたら食わしてやるぞ」
「わー、おだんごー」
回転机を強めに源気は回していた。小次郎は危なそうなのでなかなか近づけない。
「わーん、とれないよ。とれないよ」
「うーん、コジ残念だな――〜団子は俺がひとり占めだな〜」
小次郎がベソをかいているのもわかっていながら机の回転スピードを下げるつもりはなさそうである。彼は小次郎に「悪いなー」と言っているが表情はからかっている感じだった。
それは嫌だと思っているのと、源気の意地悪な顔を見て小次郎は回っている机に勇気をだして全体重をかける。 その結果、回転机が止まっただけでなく少し小次郎の体が浮き上がる、小次郎の両足が意地悪をした源気の顔面にクリーンヒットするのであった。