小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

          『愛しいプレジデンツ!』

 所信表ー明〜。私の名前は台 奈尾、中学一年生だ。私の父が現・内閣総理大臣だったりする。つまり私も将来は内閣総理大臣になると決まっていたり。え? 天皇さまじゃないんだから議員から成り上がるしかないって?? 実は今の日本を動かしているのは私と言っても過言じゃない。その理由は自慢じゃないけど私の頭の回転がかなり良いらしく、才を持っているので私の意見でこの国のいろんなことが決まるからである。

 私の将来は約束されているも同然、蛙の子は蛙。例え頭が悪かったとしてもお父さんの最高権力でどうにかなっただろうけど。私が天才で父さんは安心したんじゃないかな。
「ストップ! 転校初日でやりすぎですよ」
 副総理と官房長官がある意味機密にしたいことまで準備しているので慌て出す。
「え――? 父さんの支持率に影響ないし、みんな冗談だと思ってツカミはOKだって」
 奈尾は慌てている大人達の姿を面白おかしく見ながら言うのであった。

 総理の娘とはいえ、希望すればこの地区にある中学校に転校できる(総理の父と総理婦人の母は飛び級で経済学などを学べる大学に進学させたかったようだが)そんなこんなでこの地世田中学校に奈尾は登校してきたのである。担任の三十代半ば近くらいのメガネ先生に一年生の転校してきたこの学校のクラスに案内してもらう。
「父さんの仕事の都合で転校してきました」
 このクラスの級友になる全員の顔を見渡してからクラス(一年一組)の黒板に名前を書いて自己紹介を続けた。
「みんな仲良くして欲しいです。でないと……」
 そこで一旦話を切った奈尾、まだ紹介が続いているはずなのにどうしたんだろうと大半の生徒が感じていた。そこで奈尾が物騒な発言をする。
「もしもの弾道ミサイルの着弾地点は私が学校を休んで遠くに行ったらこの地世田区の中心に落とします」
 奈尾が顔色一つ変えずにたんたんと語るので一年一組の先生も生徒もありえ得そうなことに恐怖する。
「将来の年金も切らざるを得ません」
 これでは級友達と親しくなるなんて到底無理だろう。話しかけてくる人物がいるとすれば何とか彼女に取り入ろうとする者か、よほどの馬鹿ではないだろうか。

-70-
Copyright ©下宮 夜新 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える