「奈尾ちゃーん!!」
彼女の奇想天外な発言に廊下で待っていた官房長官が教室のドアを乱暴に開けて入ろうとしてくる。
「あれ? 官房長官」
何で教室に来たのだか奈尾にはわかっていないようである。
「さっきのは何です! 昨日のカンペを使ってくださいよ」
「だってつまんないよ」
彼女と官房長官が軽い言い争いをしているうちに一年一組のあちこちから「TVで観たことあるよ、あのおじさん」とかヒソヒソ声が聞こえてくる。
「言い直してっ」
「え〜、面倒くさくない?」
後で小言をグチグチされても面倒なので、奈尾は自己紹介をやり直すことにした。
「あれ? これ父さんのだよ?」
官房長官がやってしまった〜といった動きで言葉を失っている。
その頃、国会でカンペを使用した総理
「はじめまして、転校してきた台 奈……え?」
総理はカンペを胸ポケットにぐしゃぐしゃなまましまい、何とか演説を成功させるのであった。
自己紹介でいろいろあったものの終了し、一年一組の通常授業が始まった。一時間目にこのクラスの担任でもある数学が開始される。今日から方程式の授業だ。
「式はこんな感じでしたね、忘れた人は教科書で確認し直すように。じゃあ――この問題を――あ」
数学担当の担任の先生が奈尾と視線が合ったので当てた。
「転入生の台さんに」
「はーい」
奈尾は頭が良いので実際は必要ないのだが、奈尾の机の下で官房長官が正しい式と答えを教える。
「この式をこう解けば二です」
「式Aと式Bをこう計算して導かれた答えは二になりました〜」
数学担当の担任が苦言を呈したそうにする。
「……官房長官」
「これも仕事なんです」
そう言われてしまっては担任はもう口をはさめない。