小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 最近の中学校はどちらかというと弁当持参の学校が多いと噂に聞くが(見直されて中学校まで給食前提の自治体もあるみたいだけどね)この地世田中学校は地世田第一小学校の給食室でおばちゃん達が作っているものを配膳車で配達してもらっている。なので中学校でも懐かしの給食当番は班ごとに週替わりでみんな経験しているのだ。

「奈尾ちゃん、一口! 一口でいいから!」
 官房長官が必死でお願いしているのはこの国を実は動かしていける実力を持つ奈尾の身に万が一のことがないように確認するためにである。
「やだよ!! 奈尾おなかすきまくりなんだから!」
 奈尾がそんな必要はないとばかりに拒否する。
「毒味だよ! もしかしたら危険思想の奴がここに入り込んでいて毒を盛ったという可能性だって―――&#」

「なわけないよ――」
 官房長官と奈尾で有り得そうにない意見の応酬を繰り返している。
「食えんの、コレ……」
 特に官房長官の必死すぎる感じに一年一組の人達の食欲が失せていった。当然普通に考えて何かがあるわけがないのだが。

 放課後の帰りの会終了後に、奈尾に声をかけてくる二人のコンビな
女生徒達が声をかけてきた。
「あたし咲多ー(さきた)」
「星波だよー、よろしくねー」
 まずはギャルっぽい咲多が話しやすい話題のきっかけを作る。
「アンタさー、超面白くね?」
 その話にまずは気さくな感じの星波が乗った。
「キャラがキャラが♪ 今度遊びに行っていー? 官邸なんて」
 
 普通に接してくれたので奈尾は嬉しい気分になる。
「……う、うん!よろすく!」
 官房長官が早速情報屋に情報を求める。
「咲多 七、父親の仕事は中小企業の営業マン。星波夕子の家は書店経営です」
「一般的なイメージで良、合格」
 まさか官房長官が奈尾と付き合う生徒を隠れて選択しているとは思わないであろう。しかし、頭の回転が早い奈尾にはバレているのかもしれなかった。

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