小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 放課後に近くの席にいた咲多・星波という親しげにしてくれた二人と楽しく会話をしようとしていた時、一年一組の教室に生徒会の人がやってくる。
「失礼します。生徒会のものですが――」
 美形で仕事も出来る伊達眼鏡(この事は後でわかったことだが)の生徒会副会長が奈尾の席のそばまで来た。

「台 奈尾さん? はじめまして、蓮です。転入生へのあいさつに来ました。ヨロシクねー」
 一目見た瞬間から奈尾は蓮にみとれてしまっていた。
「は……はい。よろしくお願いします」
「蓮、父親は」
 すぐに情報屋が用意してある調査結果を伝えようとしたが、官房長官が声をかぶせてこれ以上の情報はいらないアピールをする。
「確保」
「え? だってフツーの」
「確保だ――!!」
 官房長官の中では許せる存在ではなかったようである。


 早速どこかから現れた官房長官が呼んだ確保部隊によって捕らえられてしまった蓮。
「えっ、ちょっ、あなた達何っ……え!? わ――!」
 一部始終を見てしまっていた咲多と星波はグウの音も出ない。気を取り直してさきほど見たことを聞く七と夕子)夕子が先に質問して七が話を続ける感じになった)

「ええ〜〜……何? まさか奈尾たん」
「蓮先輩狙い? 今のは……」
 少し見とれたのは事実だけどねーと奈尾は思っていた。
「う――ん」
 恋をしたかもとわずかでも感じ取れるとすぐに余計なことをされる遠い目で奈尾は語る。
「でもうまく行く行かない以前の問題ばかり……父さんの仕事の関係もあるかもだけどさー……」
 
 仕事の関係で隠れて恋愛したことのあることを奈尾は語りだす。
「前に好きって気持ちを感じた人、他国のスパイだったんだよ」
「え?」
 七と夕子はリアクションに困ってそれ以外は言えない。
「今、軍法会議にかけられている身だし」
 奈尾はその彼を思い出して何とも表現しづらい気持ちになるのであった。

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