小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 奈尾は帰る前に担任に用があるみたいなので先に帰る夕子と七。
「じゃーねー、奈尾たん」
「また明日だなー」
 彼女達と仲良くなれたので奈尾は笑顔で二人を見送る。
「うんっ、またねー」
 夕子と七(なな)は二人で帰りながら奈尾のことを話題にする。
「おもしろかった〜」
 七が夕子に同意した。
「なかなか経験できることじゃないよなマジで。国家レベとか笑えるよな全部。あはは……」
 七と夕子の行動を監視している感じの確保部隊がいる。 複数の視線を感じた彼女達は「…………」 せっかく楽しく会話していたはずなのに何も話す気が失せてしまった。

「ただいまーってアレ父さん?」
 奈尾が転入初日の学校から帰宅すると、居間で総理大臣の父親が落ち込んでいる。
「何あんなヘコんでんの」
 彼女が父親を指さして官房長官に問う。官房長官は奈尾のことを確保部隊の精鋭に任せて総理大臣のフォローに回っていたのだった。

「今日の国会でカンペを間違えて野党にぼろくそヤジられたんですよ」
 現実世界の与党と野党の争いと似た感じだったのであろう。
「父さんに華を持たせようとしたんだけどなー、支持率下がっちゃうねこれじゃ」
 総理の娘、奈尾にこれから学業を優先的にすると総理に聞いているので官房長官は影から支えようと考えてはいたのだが。奈尾が意見を出してくれるのはいつもの通りである。
(総理のために出来る事……官房長官の私にしか出来ないことがあるハズ!!) 
 最終的に官房長官が総理あてに出された手紙(意見する手紙が大半だが応援しているメッセージだけというのもある)や送られた花束を渡しただけで総理のモチベーションが回復するのであった。

 寝床につく前に奈尾は学校でのことを思い出していた。
(転校初日としては上出来の一日だったかも。夕子ちゃん・七ちゃんという友達も出来たし、魅とれちゃうくらい素敵な人もいた)
 寝室で明かりを消したあと、子どもの頃から奈尾のベッド下で見張り=防犯をしている官房長官に声をかける。
「富士長官」
「はい」
 奈尾は官房長官をも見るまでもないと思ったのか逆向きでたんたんと数年後の閣僚について伝えた。
「私の代で民間からの閣僚登用、メンツは決まったから」
「承知」
 この日はスルーしたがいくら昔からこの部屋の見張り番をしていた官房とはいえ、奈尾も思春期を迎えている。総理大臣の父親に言って見張りは部屋のドアの外でしてほしいと移動を進言するように考えるのであった。

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