小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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               『ネコうと』

 ある学園での一幕

 挨拶をするのに少し勇気を出して陽気な男子生徒が主人公の子に声をかける。
「お、おはよっ、つくしちゃん!」
 他にもつくしが上履き入れに行くまでにいる生徒達はまるでファンクラブ(今のところ存在していない)のように彼女が見れただけで「つくし様だ……」とつぶやき、天にも昇る気持ちになっている。
「おは……よ」
 容姿端麗で学業優秀な我が学園の女神!!そんな彼女の本名は坂口つくしという。彼女は同性から見ても素敵(というか何か癒される感じ?)と思うものがいるらしく、見とれている女生徒もちらほら存在する。
「ヌコのまくらだ……」
「ニャンちゃんパジャマだ……」
「いい……ステキだ……」
 つくしはしっかり制服を着て学校に来ているのかと思いきや、男子生徒が胸キュンするまくらを持っていたり、スカートは着用していても猫パジャマの下を脱ぎ忘れているようだ。靴ではなく、猫ちゃんスリッパだったりするのでいつも寝ぼけている変わった子だと一部の間では思われているみたいである。

 午前中の時間が終わってもウトウトしているつくしちゃんは友達と一緒に一般開放(この学園関係の先生・生徒・保護者のみ)されている中庭でお弁当を食べていた。ウトウトしながらも今はタコさんウインナーを口に運ぼうとしているし、お弁当の中身は半分以上減っているのでこれが彼女のデフォルトな行動なのだろう。 

 つくしちゃんの友達の天波(あまなみ)ちゃんがつくしちゃんに恋の質問を聞く。男生徒が頭を下げて「好きなタイプ」を聞いてきてくれと頼んできたので最初は面倒だと思ったが、自分もつくしのことが気になるのでそれとなく探ってみた。
「ねえねえつくしってさ、好きな人いる!?」
 つくしはどうやら想い人がいるらしく、頬を朱く染めた。
「え……?」
 天波は好奇心で知りたくなる。
「誰? 誰?? 教えてよ〜! ヒントヒント!!」
 
 つくしは天波にだけ教えようと内緒でヒソヒソ話をする。
「……何? ネコみたいな人?」
 その天波の声をひっそりと聞いていた男子生徒達が猫っぽい仕草、蝶を追ってみたり、猫がする顔を洗う感じをしてみたりゴロゴロしていたりケンカしていたり丸まって眠る感じをしている。
(アイツらじゃないことは確かね……)
 天波は男子生徒達の痛い行動にげんなりした。

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