小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 放課後になって、つくしは天波に見ているだけで幸せな気分になれる人にプレゼントを渡したいと思って一緒に来てもらった。
「野球部にいるの?」
つくしは恥ずかしいので頬の辺りを猫クッションで隠しながら頷く(うなずく) その後は何もつくしが言わなくなったので天波が視線だけで判断するしかなくなる。

 つくしは自分だけの世界に入っていた(しなやかな体……そっけない態度……不機嫌そうな瞳……耳……)「くおら――ーーっ、ゴロは体で止めろつってんだろが!!!」
 赤鬼せんせい…… L・O・V・E……

 天波は人が好きになった人を否定する気はないが、好きになった理由は何とも言えない気持ちになった。
「髭が微妙にネコっぽくなっているだけでか……」


 赤鬼先生が部活を終わらせて職員室戻るまでにこの道を通るとわかっていたつくし、何ヶ月も片想いで見つめていたから可能な行動だ。赤鬼先生が来る直前からネコじゃらしをパタパタさせている。
何のマネだ? 坂口」
 無愛想でバットを持っているので怖い先生オーラが出ているこの先生の靴のホコリを落とすかのような形に黙然なった。
「あ……っ! あの……」
 声をかけられて喜んだつくしは、クッションの中にしまっていたプレゼントを渡す。極上カツオブシを渡せたのでつくしはその場を後にした。


 次の日――昼食の時間
「……赤鬼先生の今日のお弁当、変わってますね」
「……そうか? けっこ――イケるぞ」
 ほかの女性の先生は遠巻きに見るようになり、ゴリッバキッバキッなどの咀嚼音に男の先生は何の音かとビックリしていた。

「……私の気持ち、届いたかな〜〜?」
 つくしは赤鬼先生にプレゼントしてから幸せな気分でポ〜っとしている。
「……お似合いなんじゃない? アンタたち」
 天波はプレゼントをする方もする方だが、食っている赤鬼先生に呆れ気味になる。変わり者同士お似合いなのかもしれなかった。

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