小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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               『小妖魂』

 俺の名前は直江入高(なおえ いりたか)、いきなりだけど俺の家は金持ちだ。俺は高校生になって親から一部屋もらった。もらった部屋で就寝した翌日はスズメの鳴いている時に目が覚めてしまったのである。目が覚めて朝の光を浴びたので体の機能が起きてきた気がする。起きた理由はそれだけではないが。俺の家がどれくらい金持ちかっていうと、専属ボディガードを家族一人一人につけているくらいだと理解してくれればいい。このボディガードは寝ずの番をするのだとベランダにいるのだが、正直やめて欲しい。

 俺の家系が代代小妖を使役するからかボディガードも小妖で、小学生低学年の子くらいの人型小妖なので扱いづらくて仕方がない。目に爪楊枝をはさんで寝ないなんて真似はしなくていいのにと俺はベランダを開けて思う。
「はっ!! 申し訳ありません主様……!! 徹夜で警備のつもりが寝入ってしまうとは一生の不覚!! こうなれば切腹してお詫びを!!」
「いーからつまようじ取れ」
 俺は他にも言いたいことはあったものの、言えたのはこれだけだった。


 ちなみに小妖のこのチビッ子にも名前はある。
「あかいろ、学校に行くぞ。支度しろ」
 俺はベランダの窓を閉める時に今日の仕事の依頼をする。
「はい主様! 我が命にかえてもお守りいたします!!」
 早速あかいろが任務に取りかかる。
「はっ! 服に毒針などがしかけられているのやも。確認いたします」
 こいつの前のやつがどんだけ昔の奴か知らないが、ありえないことを口にしながらYシャツをバサバサしていた。
 
 朝食の時間、俺はスーパーマーケットで買ってきた惣菜を用意し始める。
「はっ! 食器に毒が塗られているやも。おまちください」
 俺が前から使っている食器の皿を拭いてまわるあかいろ、拭き終わった皿を使って食事をする俺だが正直何ともなかろうが気になってしょうがない。
「何者かがひそんでいるやも」
 ドアを少しずつ開けてあかいろが外の様子を調べている。
「お前は俺を遅刻させたいのか」
 食事の手もなかなか進まなかったし、この現代社会の国で無用な警戒をするあかいろに俺はしびれをきらしてしまった。

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