「ルタインちゃん、すっかりボケている気がするね〜、昔はハキハキした子だったのに〜」
私に話しかけてきたのはルームメイトの子だ。
「穂乃……」
「中国人を右に……」
精霊ルタインの言動は意味不明なので気にしない方向で。改めて彼女は内野穂乃、唯一の理解者でありルームメイトでもある私の親友である。
「そろそろいい方法を考えないとね」
年齢が一歳しか離れていないから仲良くなって、いろいろと考えてくれるので本当に嬉しかった。穂乃が考えている時に間があると何かを考えているサインである。私は彼女の意見をじっと待つ。
「よし! 今夜は鍋にしよっ!」
「!?」
ルタインを鍋のダシにするイメージのようなので根本的な解決にはならない。穂乃のことは……ドライな今時娘とでも考えて欲しい。
「玖林ちゃんも今年でもう三十歳か〜、もはや魔法少女って年じゃyないよね〜」
手芸をしながら楽しそうに聞いてくる穂乃、私は生返事で話を聞いているのかいないのか微妙な感じだ。
「うるさいなー……」
悪気なく穂乃が話を続ける。テンションの高い彼女に私はついていけない。悪気がない分、余計にタチが悪かった。
「魔法少女っていうか魔法妙齢? 魔法年増って言いすぎだよね〜」
私は聞いているだけでうんざりした気分になっていた。
「どうでもいいよ……そんなの」
穂乃が思いついたままのことを口にする。
「あっ、こういうのはどう? 魔法しょじ……」
「だまれ!」
解釈のずれた穂乃に私は励まされる。
「恥ずかしがらなくてもいいよ〜、私もだから!」
(嬉しくねぇ〜……)
前向きな穂乃は見ているだけで元気がでてくることが多いものの、こういうことまで口に出さないで欲しい。落ち込むだけだから。
当たり前かもだけど…私にだって青春時代の告白された経験はありました。
「栗林さん、僕と付き合ってください!!」
顔を真っ赤にして告白してくれた同学年の男子生徒、勇気を振り絞って私に告白してくれたんだよね?断る理由はないけど困る。
「えっ、あ……あの……」
私は隠し事をしたくないのでありのまま話した。
「私……魔法少女だから放課後は悪霊退治しなきゃいけないの……だからデートとか出来ないけど……そ……それでもいいのなら……」
そうやって話すと私に好意を持ってくれた男子生徒は笑顔のまま距離を取る。私、痛い子って思われちゃったのかな? 私の全てを受け入れてくれる人は今までいなかった。