今でもたまに夜霊が一晩に二〜三回出没することがある。魔法の杖が光ると夜霊出没の合図だ。
「……あっ、玖林ちゃん。杖が光ってるよ」
「……やれやれまた夜霊のご登場か〜……」
疲れて休もうとしていた時になので、タメ息の一つもつきたくなるというものである。
「仕方ないか。行ってくるよ穂乃……」
その様子を見ていた穂乃が気遣ってくれた。
「玖林ちゃん……本気で辛いならもうやめてもいいんじゃないかな。玖林ちゃんだって人並みの人生を送ることは自由なはずだから……」
私は穂乃の気持ちがとても嬉しかった。でもいくら小学生の時とはいえ、一度決意したことを辞めるという考えはないようだ。
人のためになるというのが大きな理由なのだろう。
「……うん……まあでも一度やるって決めたことだし……私が戦うことで誰かが救われるのならやめるわけにはいかないよ。私にはその力があるんだから……心配してくれてありがとう穂乃、じゃあ行ってくる」
私が変身して窓から出かける時は空気を読んで穂乃は別の部屋に移ってくれていた。
「……リーム・ベート・リピー……リッピヘア・ティヒーフメルヘントメーヘン!」
皆さんどうか覚えておいて欲しい。人知れずあなたの生活を守ってくれている人がいることを……そう信じて夜空を見上げればもしかしたら三十路の魔法少女が星の海を駆けてゆくのが見えるかもしれません――