あたしの親友だった寺田咲(テラダ・サキ)はイジメを苦に自殺したんです。
少し前のことなんですがとっても後悔してるんです。こんな自分が、何も出来なかった自分が一番憎いんです。
『香奈ちゃーん! 学校一緒に行こうよ」
そう言って柔らかく微笑んだ少女は親友の咲。
あたしと咲は小学校から中学までずっと同じでいつしか親友といった特別な関係になっていた。
「うん、いいよ」
そうして学校までつく間、他愛のない話をしながら歩幅を進めていく。
笑うたびに咲の二つ結びの髪の毛はゆっさゆさ揺れる。
その姿は見てて微笑ましくなる。
あたしは咲に憧れていた。
いつも堂々としてる咲を見ているとなんだか自分がものすごくちっぽけな存在に見えてしまっていた。委員長だってやるし頭もいいし笑顔も可愛い咲。
なにもかも完璧な咲に憧れを抱くのは無理もなかった。
きっと自分の他にもそんな思いを抱えていた人もいたと思う。
そして時は流れ、憧れの親友と同じ高校に合格したあたし。
卒業証書を持って意気揚々に自分の家に帰ったあの時は妙に心の中がざわざわしていた。
きっと奥底では分かってたんだ。
あたしが咲に゛依存している゛ことを心の奥底にいる自分はずっと知っていたんだろう。
ただ見ないふりをしていただけなのかもしれない。
事実を直視するには自分があまりにも弱かったのだ。
これがあたし、群れないと不安で怖い中学生なの。
同じ高校の制服に袖を通して昔と変わらず二人で登下校。
高1の時は何も不安なんてなかった。
光しか見えていなかっただけ。
横の横にある黒を見つけることができなかったんだ。