小説『君が死んだ日【完】1000hit達成!!』
作者:ハル()

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〜♪〜♪


スカートのポケットに入れていたケータイが鳴り出した。
開いて画面を見ると゛姉ちゃん゛の文字。

(どうしたのかな・・・)


「もしもし」

「あ、香奈? 声暗いけど何かあったの?」

姉ちゃんの声は元気そう、ちょっと安心。

「うん、別に。それよりどうかしたの電話って」

姉ちゃんは少しため気味に口を開いた。



「実は私、小野君に告白したの」

(!)
あいた口がふさがりそうにない。
どうしてそうなる。

「そ、それで?」


「オッケーだったっ!」

「ほっ本当に! よかったね姉ちゃん」

姉ちゃんの弾んだ声が聞いてて心地よい。努力って報われるんだな・・・。


「香奈、なにがあったのか知らないけど大切な人を見失わないようにね。あとできっと後悔するから」

(・・・)

「私が偉そうに言えたことじゃないけどね。じゃあまたねっ」

プツリ



大切な人 後悔

その2つが頭の中をループしている。

『大切な人を見失わないように』

あたしにとって大切な人・・・。






――――矢木矢さん


「やっぱりやだ。矢木矢さんっ!」



咄嗟にそう叫んだ。
でも家からは物音一つせず、それでもあたしは大切な人を失いたくないの一心で屋敷に入れる入口を探した。玄関は開かない。さっき矢木矢さんが閉めたのだろう。


(矢木矢さんっ まだ生きてて!)

その時、池の水が流れる音が聞こえた。
・・・そうだ、この家には庭から中に入れる入口があるんだったっ。
庭へ行くと家の障子へ手をかける、開いた・・・!
表紙を開けて家の中にまた入ることができた。急いで矢木矢さんを探した。
でも一階には人の気配はなさそう。
上へと続く急な階段をのぼることにし、2階へと到達。
2階には1つだけ部屋があった。その部屋のドアの隙間から風がスッと足元によってくる。

(ここに、いる・・・?)

ドアを開くとその部屋は無機質な空間、家具がひとつもない寂しい場所。
ただその場所には見覚えのある゛大切な人゛がいた。


「―――なんで、」

大切な人が畳の上で倒れている。
手元には水滴のついたグラスと白い粉薬が半分残っている。


(これが、人が死んだ姿なの・・・?)

そう思い、恐怖で震える手で彼の腕を見た――――――脈がまだある。
まだ助かる?
一筋の光が見えた気がした。

「矢木矢さんっ矢木矢さん!」

必死に呼びかけながら中学の時にうろ覚えでだけど、習った蘇生法を夢中でやった。
手順があってるかなんてわからないただ失いたくない。こんなものが役に立つかなんてわからないけど夢中で。

数十分後、矢木矢さんが口から何か白いものを吐き出して目を覚ました。

その時はただただ驚いた。自分が人の意識を取り戻せることができたということに、こんなうまくいくなんて。


「矢木矢さんっ」

「っ・・・香奈」

矢木矢さんの声が聞こえるなり涙が出そうになった。
また会えた。失わなかった。


「俺は、死ねなかったか・・・」

「いいえ、あたしが邪魔したんです」

「邪魔?」

「・・・あたしが矢木矢さんを失うのが嫌で蘇生させたんです」





矢木矢さんは目を見開いてキョトンとしている。




「香奈。なんで俺にそんな構うわけ」








精一杯の気持ちであたしは答える。





「それは、矢木矢さんが好きだから」


矢木矢さんはただポカンと口を半開きにしている。
あたしは困らせることを言ったんだなとなんとなく思った。
でも、矢木矢さんは


「なんて答えればいいだろうねぇ」


と、少し微笑んであたしの頭をポンと叩いた。
その時こう思った。

(あたしは矢木矢さんが近くにいてくれれば幸せなんだな)

と。
部屋の窓からは太陽の光がさしてきて眩しいけどなんだか嬉しかった。
雨は止んだのだ。


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