小説『君が死んだ日【完】1000hit達成!!』
作者:ハル()

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足音が近づきすぐに声が聞こえる。

「矢木矢さんっ?」

と。
畳から起き上がって庭に出ると制服姿の香奈がいた。
少し頭がぼうっとして眠気を覚まそうと目をこするが効果は出ない。

「よお」

あー眠い。

「あ、いたいた。じゃあ矢木矢さん・・・」

「―――そうだな、行くか」


そのまま俺と香奈は家の近くにあるバス停に行った。
古びたバスの停車場。
時刻表を見るともうすぐ来るらしい。
香奈のほうへ視線を向けるとアイツは両手をガタガタと震わせていた。無理もない。

今から俺と香奈は自分の、大切な人の墓参りに行くのだから。


そしてその墓参りに行こうと言い出したのは俺ではなく、香奈。
その提案が来たのはわずか十日前のことで唐突な予定にさすがに戸惑った。
なんで、そんな急なんだ?と聞くと。

『今なら、ちゃんと向き合えるかもしれないからです』

と、しっかりとした香奈の声が受話器の向こう側から見えた。

『本気か? また傷ついたって何も保証は出来ないんだぞ?』



『でももう逃げられません。傷ついたって仕方ないし・・・』


堂々とした、それでもどこか影のある声。
その時かすかに希望が持てる気がした。
ボウッと初めて会った時の香奈の姿が数々の記憶の中から思い出されたのだ。

自殺をしようと屋上にいた香奈、生きてはいたがアイツの目は虚ろになっていて少し間違えるとその目は空洞に化してしまいそうなほど弱々しかった。
今の香奈はというと、思い切ったこともちゃんと言えるし目は堂々としたものへとなっていてアイツはもう弱々しい人間じゃない・・・―――堂々と胸をはれる人間だ。

今の香奈なら傷ついても大丈夫かもしれない。
そんな希望。

俺も綾乃と決着をつけなければいけないんだなと感じ、自分に即座に問いかけた。

(お前も向き合う決心はついたか?)






『香奈、決着をつけに行くか』




そうして今、俺と香奈はこのバス停にいる。
遠くの方からバスがやってくるのが見えた。


―――――――。

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