小説『君が死んだ日【完】1000hit達成!!』
作者:ハル()

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…疲れた。
偽るのは楽じゃないや。


やっと学校から開放されて、あたしはそそくさと足を進める。

あの曲がり角を左折すると小さな商店街に出る。
その商店街を真っ直ぐ歩くと斜め向かいに細くてくねった道があり、そこをまた真っ直ぐ進むと右手側には竹やぶの森が現れる。左手側には和の雰囲気漂う家がどっしりと構えている。

その家の門をぬけて庭の方向へ行くと大きな松の木が植えてあり、小さな池がコポコポと水音をたてていて、和のシンフォニーを奏でている。

この家は浮世離れしている雰囲気がある。洋というものが全く立ち入っていない。
築何年だろ、この家。
見た感じ10年以上たってそうだけど…


そんな事をぶつぶつ考えていれば家の障子が人一人入れそうなぐらい開いている事に気づく。

…なぜ開いている。
あっ もうすぐ夏だからか。
今日暑いしねー。


障子の中をのぞいてみる。

畳の藺草の匂いがふわっと寄ってきて、少しクラリとする。
その畳の上で無防備に寝ているこの家の主、矢木矢さんを発見する。
足元には大学帰りなのか、テキストらしきものが入ってるバックがタンスに寄りかかっていた。

スースースース、寝息をたてるこの家の主は体に何もかけていない。


「腹壊しますよ。矢木矢さん」


あたしも先週、こんなふうに寝てたら見事にお腹ぎゅるぅうるるるってなりましたから。
もう、ギャーでしたからあたし、本当に。

だがこの男はあたしの心配を知らぬまま、夢の中に滞在中だ。
一日中滞在してしまえ!

この前のでこピンを思い出し、すかさずコイツのおでこに人差し指をロックオンさせる。


フハハハハ!!! でこピンの痛さ思いしれええぇぇぇ!



こつんっ


「イテーよ。水玉」


んんん!!?


「起きてたんですか…」

「あたりまぇ」


何があたりまえだ、この野郎。
寝てなさいよ。寝てるほうがあなた王子様だよ。リアルに。


「っ でこピンしたでしょ」

「……細かい事は気にするなですよ」

精一杯の抵抗とでも言おうか。
ハハハ。

あー なんか言われそうだ。びくついて鼻呼吸が増えるじゃないか。

スーフースーフー


「通気孔確保〜」

スー…


矢木矢さんが楽しげに言った言葉が聞こえた瞬間。


□♯×♪●♯…と、脳内が数秒パニックになった。あたしがあわわわわとなった。


矢木矢さんはニコニコしながら親指と人差し指であたしの鼻を挟む。

スーフースーフーしてたあたしにとっての通気孔がふさがれた。
いきなりふさがれた事によりあわわわわだ。

数秒後に口という通気孔があることを思い出す。

口に空気を急いで流し込む、矢木矢さんはそんなあたしの必死な行動をニコニコ楽しげに見ている。


ニコニコニコニコ


(⌒ー⌒)



このどSっ! サディスティックめっ!



それにまだはなさないっ。鼻を離せ。
ほらっ 早く。


「鼻をはな゛じで…」


なんてハナゴエだ。
発音もぶにゃぶにゃじゃないかぁあぁぁ!
恥ずかしい。恥ずいよコレ。
コレが世に言う羞恥プレイというやつかっっ!?
やめろぉぉぉ これじゃあ あたしが、いじられ大好きどSキュンキュンなどMちゃんでえ〜すってかんじの設定になっちゃうじゃないか!!!
キャラ崩壊は避けたい!
どMキャラはやめろおおぉ


「ちょーハナゴエ。うける〜」

ケタケタ笑いだしたよこの男。
誰かコイツを抹殺しろっ
ミサイルでズキャーンッてさぁ。
切実な願いだよコレ。


なかなか離してくれないから抵抗をはかる。
この男の体に拳骨を入れた。
ドカッと、殴ってみた。

腹を。

そのパンチはやつの急所になったらしくグヘッという声がやつから聞こえた。

そして、腹を保護すべく鼻に使っていた手を自分の腹へ移動。
通気孔は開通されました!

空気さん、通行止め終わっからどんどん入れ〜!
ハッハッハッ
  


あぁ笑ってるのもつかの間だ。





このどSは何か言いたげだ。

何を言うきだ。
逆襲か? 腹痛の逆襲なのか?



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