―謎の男―
起きたらすでに朝だった。
昨日は夜食抜き。
だから今日は余計に空腹感があった。
テーブルにはトーストとハムエッグが並んでる。
おいしそう。
テレビは天気予報。
家族は皆いつもどおりに朝をすごしてる。
変わらない朝、でもあたしには最後の朝。
だってあたしが明日生きてることはないだろうから。
きっと。
だからこの景色を、家族を目に焼きつける。
明日になったらあたしはこの家で朝を迎えられなくなるから。
全部、最後なんだ。
いそいそと朝ごはんを食べる。
やっぱりおいしい。
お母さんいつもありがとう
もう、でなくちゃ
がたっと椅子から立ち上がりドアの方向へ進む。
バイバイ
皆バイバイ
「今日はずいぶんと早いのね」
お母さんの声が聞こえた。
不意打ちだ。
泣きそう
「…今日は久しぶりに早起きしたんだー!」
わざと明るく言った。
心が痛かった。
「そう、気おつけてね」
お母さん・・
「いってくるね…?」
バイバイお母さん
バイバイ皆
あたしいってくるよ
バイバイ