眠気と戦い数10分後、時刻はPM7:00を指す。
「今日もお疲れ様。はい、お金」
店長のふっくらとした手から骨ばった俺の手へと茶封筒が渡される。
すぐにその中を1800円ちゃんと入ってるか確かめる。
よし、大丈夫。
「…それにしても矢木矢君、少しやせた?」
店長が心配げに俺を見る。
「ええ、まぁ。最近バイトばっかしてるせいだと」
「あら〜大丈夫なの?」
そう言う店長の腕についているパワーストーンブレスレットは腕の肉に刺さっている。血が止まりそうだ。あなたこそ大丈夫ですかと聞きたい。コレステロールには気をつけたほうがいいですよとも忠告したい。
…って、あれ…。
目の前にいた店長がいなくなっていた。ハァ? イリュージョン?
キョロキョロ周りを見渡すもデブの女はいない。
…トイレか?
「矢木矢君っ!!!」
「うわっ!」
後ろを振り向いたらデブの女がいた。あ、店長。
手には何かパンのようなものが入った袋を引っさげて。
「…なんですか、ソレ」
「うん? 売れ残ったベーグルよ。お腹すいたら食べてねっ」
うわー! すごいありがたい!
「ありがとうございます」
「でもね、食べ過ぎると太っちゃうから気をつけてね」
「あー はい。ありがとうございます」
店長…。
「またね」
やっぱ太ってるってわかってるのか。