「ねー今日割引だってぇ」
「うわぁマジ!? あたし歌いまくっちゃぅ」
「あ、お兄さーんそれチョーダイ!」
俺は女子校生達に炭酸を手渡す。
「あざーすっ。キャハハハ」
…妙にテンション高くてうぜぇ。
でもこいつらも俺と同じ高校生なんだよな。あーウルサっ。
気だるげに部屋から出る。
廊下に出ればあちこちの部屋からカラオケの爆音とか笑い声とか聞こえる。
もう慣れてるけど相変わらず耳に優しくない。なんとなく視線を下に向ける。
「よぉ、矢木矢…」
少し上から聞き覚えのある声がした。
「草山! …どうした?」
草山の目が死んでいる。あのテンションクソ高のアイツが…! これは台風来る。
「もう、女なんか嫌いだああああああああああああ」
「ハァ?」
「イケメンはいいよな! おまえに俺の気持ちはわからないはずだ!! じゃーな! ああああ」
「ちょ、ちょっ!」
呼び止めようとしたがもう遅かった。
草山はやる気スイッチを押されたかのようにカラオケの廊下を走り抜けていった。
…明日慰めてやろう。なんか、悲しくなってきた…。
「もうさー、今日の合コン超はずれだったよね」
「アイツ意味わかんなくね? 始めるなり寒い一発芸してさぁ。マジ引いた」
ん? まさかな。
俺の横を2人の女子高生が横切る。一人は携帯をいじくりながら毒を吐いてる。
でも俺もその男いやだなぁ。一発芸とかは無いだろ。
「名前なんだっけ」
「草山! もう、゛クソ山゛でいいよ!」
「チョーウケル!! 腹いてぇ〜!」
草山……。
なんか、悲しさを超えて寒くなってきた。