小説『獣医禁書』
作者:深口侯人()

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先輩が病院を去った事による害はまだある。
休診日の急患対応は“生ゴミ”以外の獣医師がやることになっているが、その獣医師が1人の場合はどうなるのか?
当然、1人で全ての日を担当しなければならない。
急患対応日は自宅待機であるために遠出もできないし、そこそこ急患が来るし、来なくてもいつ呼び出されるかという恐怖に震えながら一日を過ごすのでとてもゆっくり休めるものではない。
しかも、これも当然の事だが、休診日は今まで通り“生ゴミ”に話しかける事すら禁止な上、翌日には診療の不手際を容赦無く責めてくるので、もうどうしようもない。
つまり、休診日はもはや僕にとっては休日ではなくなったというわけだ。
これで、お盆休みも台無しだ。
“生ゴミ”から何かしらの配慮があるはずも無く、むしろ「大変だねぇ〜。頑張ってね。」というイラつかせる事が目的としか思えないような表面的な応援をしてくるだけ。
助けてくれないならせめて、人を不愉快にさせるような言動だけでも慎んでほしいものだ。
人を不快にさせるだけで何の役にも立たないなど生ゴミ以下、まさに汚物ではないか。
ただ、不幸中の幸いなのが、超繁忙期を過ぎたということで僕にも従業員が交代で休む“週2日目の休日”が与えられた事だ。
かくして、週休2日のはずなのに休めるのは週1日という世にも奇妙な勤務生活が始まった…。
とはいえ、今までは週休1日でそのうち2回に1回は急患対応がまわって来ていたため、週休0.5日みたいなものだったので、それに比べると休日は増えた事になる。
良いんだか、悪いんだか。

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