小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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ソファーに寝かされていた少年と、このチームのリーダーのも見える短髪より少し長めな髪型をした茶髪の少女と目が合う。

少年は最初の言葉がなかなか見つからず戸惑っていた様子だったが、そんなことを気にした様子が全く感じられない少女の方と言えば、彼の意識が回復したことを逆手に取って同じ質問で問いただす。

「そうだ!君のも考える時間はたっぷりあったはずよッ!さぁ、聞かせてもらいましょうか!!」

彼女はそう言って上半身だけ起こしていた少年の元に歩み寄る。

「なにを?」

主念は訳が分からず質問する。

「この作戦本部の新しい合い言葉よッ!!」

彼は同時に顔をしかめていた。

(この会話の意味がそもそも理解できねぇ!なに?考える時間なんてある訳ないだろッ!!ったく、なんなんだこいつら!!)

少年はそんなことを頭の中で考え、今にも脳内が沸騰してしまいそうな気分になると、少年の顔を覗き込むように急接近してくる茶髪少女に目を細めながら答える。

「『勝手にやってろ反逆者』」

そのどうでもよさげな提案に真っ先と反応したのはあの木刀を腰からぶら下げた男だった。

彼は左腰にあった木刀を掴むと少年の首を狙いを定める。

その行動にぞっとしたのか、隣にいた少し小柄な背に少年は一歩後ずさり。
木刀を持って『入合い切り』の構えに入った男は少年に声を低くして最後に確認を取った。

「ほう、あすかに歯向かうとはいい度胸だ小僧。…いまのことばを訂正する気はあるかぁ?あぁん!!」

ソファーに乗っかっていた少年は勢いよく起き上がると即座に言い返す。

「勝手にやってろって言ってんだよ!!」

「なんだとッ!」

「なんなんだよ、お前らは!俺を巻き込むなよ!!俺はとっとと殺されるんだッ!!」

「殺されたい?今ここに存在しているのにですか?」

そう言ってこの二人の間に割って入ったのは、先ほどまでの状況を一切しゃべらずただ黙っているだけだったメガネの長身男だった。

少年は全力でそれを肯定する。

「ああ!そうだよ!!」

茶髪の少女がそこで「その説明はまだ途中だったわ」と言い、一回区切る。

少しの間があってメガネの調子のとこが再度少年に問いかえた。

「抗いもせず、そのまま殺されることを選ぶと?」

「ああ!」

少年は否定しない。

「抗い載せず消去されると?」

「ああ!…あっ?消去?」

その言葉に彼は疑問を抱いたが、考える間もなく声主が変わったことに気付く。

「けっ、殺されれば元の世界に帰れるとか思ってんのか、てめぇ?」

馬鹿にするような憎まれ口調で言ったのはまた木刀を持った男だった。

さらに、

「然り」

後ろの扉集辺の角となっている壁際に、口元を厚毛のマフラーで隠している怪しげな少女が小さくぽつりと呟く。

「な…」

なにか見下されているように感じた少年は、とっさに後ろを振り返った。

先ほど小さく呟いたマフラー少女はすでに目を閉じて眠っているように見える。

「そんな都合のいい話があるものか。そんなことなら我々全員は皆ここには入ない。」

言葉の連鎖は止まらず、今度はまた前方から声がした。

また振り返るとそこには力士並みの大男が立っていて不愛想にこちらを見ている。

「そんなまさか!!」

声を張り上げて叫んだものの、すでに彼の言葉からは自身がすべて抜けきっていた。
メガネの長身男はメガネを一度戻す動作を行うと、薄く微笑む。

「どうやら、まんざらでもないようですね。」

「くっ…」

「そらどうしたッ、あのロボットに殺されたいんならさっさと帰れよ。そして刺されでもして無事消えてなくなるんだな。幸せな最後じゃねぇか。」

極め付きにあのうざったらしい木刀男から呆れ半分で言われてしまった。

「刺されて死ぬ…」

彼はそう言って少し想像したが、考えるだけでも恐ろしい。

「えっ、あの人刺されて死ぬ気なの?!」

小柄な少年があわてて口を開く。

「彼はそう言っています。」

きっぱり決めつけたのは校長の机側にいた決め顔の長身メガネだった。

「へぇ〜そうだったのか、そりゃ残念だぜ。」

今の今まで赤く腫ればんだ顔をさすり続けていた薄紫色の髪をした少年は、なおも顔をさすりながら心底残念そうに言う。

「解せぬ」

最後にひらめいたような顔をしてはっとしたマフラーの少女は、また後ろで居眠りしてしまった。

そこであの茶髪の少女がみんなをなだめるように話題を取り換える。

「まぁまぁ、みんな、そう追い出すようなことは言わないで上げて。彼が可愛そうに」

そこまで言うとまた彼女はいったん区切り、自信気に胸に手を当てる。

「この我が…あぁ、えと…最近決まった団体名なんだったけ?」

そこで誰かにお助け舟を要求するかのような困った表所で瞳をパチクリさせた少女はそのまま仲間の返答を待つ。

「ふじつぼ団体。」

フォローするような格好でそう言ったのは木刀をぶら下げたあの男だ。

それを聞いてわざと思い出したかのような顔を作った少女は気を取り直した胸を張る。

「…そう!我がふじつぼ…」

ダン!
旧校長室から原始的な暴力行使の音が鳴り響いた。

部屋全体につかの間の沈黙。

嘘をでたらめに言った木刀男の顔にはあの薄紫色の髪をした少年曰く痛々しいほどくっきりと少女の足跡が赤く残っている。

その顔からはフライパンから出るあのジュゥージュゥーと言う音が小さく聞こえていて本人の瞳からは男の勲章たる涙が零れ落ちていた。

「今思い出した。抗う者(アライブ)!!」

茶髪の少女は「クぅ…良い蹴りだったぜ…」とぼやいている木刀男を無視して少年の方に視線を変える。
どうやらまだ説明は終わりそうにない。

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