茶髪の髪をしたリーダーっぽい少女は、その場で言葉を失い立ち尽くしていた少年に声をかける。
「この戦いの本部にいる間は安全なんだから、君もそれを知って逃げ込んできたんでしょう?」
「いや、知らないし。入ろうとしたらふっとばされて気絶させられたし。…ていうか、元いた世界があったとして、死んでもそこに戻れないなんて冗談だろッ!?」
我ながら勝手な解釈をして今まで殺されてもいいと思っていたが、その考えがすべて否定されてしまったら自分はいったいどうすればいいのだろうか。
少年は待つ。自分が望む最高の返答を。
「冗談ではない。」
力士並みの大男は少し眉を細めながらあっさりその質問を肯定してしまった。
彼の視界が一瞬歪んで見えたのは自分の錯覚だろうか。
わがままな解釈だとわかっていても、それを認めてしまうことに恐怖を覚えてしまう。
「だって、そんなの確かめられ無いじゃないか!!…誰か見てきたのかよ!!」
少年のかすれかけた声が部屋にただ虚しさだけを広げていった。
「そりゃあ、確かめられないわよ。でも死ねば元の世界に戻れるなんてそんな都合のいい話があると思う?」
少女はあっさり確かめようの無い事と認めた上で、自身の考えを定義する。
その表情は少年とは違い、自信がみなぎっているように感じられた。
「そんな…消去されるだなんて…」
背筋にひんやりと冷たい汗が通過して、彼はやっと自分が恐怖で震えていることに気付く。
その様子に感づいたのか、話していた茶髪の少女は腕を組んで言い直すように話を進めた。
「まぁ、死んでも消されるだけ、っていうのはあくまで私の推測よ。」
彼女は言葉を一回「でもね、」と区切ると再度息を吸い直す。
「よく聞きなさい、ここが大事よ。私達がかつて生活していたはずの元いた世界では、人の死は無差別に無作為に訪れるものだった。…私たちの場合はどうなのかよくわからないけど、残された我々の知識にはそう教え込まれているはずよ。まぁ、だから抗い様がなかった。でもこの世界は違うのよ!ロボットにさえ抵抗し続ければ存在し続けられる、抗えるのよ!!」
「でも…まて、」
少年はそこまで聞くと、震えた口調で自身の最大の疑問をぶつける。
彼は最後言った。
「その先にあるものはなんなんだ?…お前らは何をしたいんだ?」
その質問に少女はメンバー代表のような感じで一歩前に出ると後ろに集合した仲間たちにこくりと頷く。
校長の机の後ろで透明のガラスが太陽に照らされ満弁に輝いていて、少年は数秒間目を閉じてしまった。
そして、少しづつ瞳を開いていくとそこには、
あの太陽と同じく満弁の笑顔を作った少女の姿があった。
光に包まれた部屋の中で、ただ声が響く。
自信と希望に満ち溢れたその声は、過去にどれだけの人を救ってきたのか。
「私たちの目的はアンドロイドを消し去ること。そして、」
少年は震えた体で確かに聞いた。そう、はっきりと。
「この世界から脱出するのよッ!!」
旧校舎全体に少女の声だけが響きわたる。
De-tao-ba-araibu11 end