この世界から脱出する。
「え…?」
彼女の口から発せられた確信にも近い一言が少年に一つの希望を与えた。
だが、それと同時に彼は戸惑う。
―――自分はどうすればいい?
彼女は戸惑いの表情を見せる少年を察したのか、彼を落ち着かせるために言葉を続ける。
「まぁ、ここに来てからまだ間もないから混乱するのも仕方がないわ。順応性を高めなさい。そして、あるがままを受け止めなさい。」
「そして…戦うのか?」
「そうよ」
そこで彼女は少年に向けて手を伸ばした。あたかも握手をするように。
彼女は言う。
「共にね。」
少年は迷った。自分に何ができるのか。この非力な少年にいったい何が出来るというのだろうか。
周囲の若者たちの視線が一点に集まる。
この手を伸ばすべきか、否か。
彼が決断を下そうとした、その時。
「早まらないでくださいッ!あすかさん!!」
突如後ろの扉が両方同時に開かれ、そこには一人の少女らしき人影が。
部屋にいた少年が声のした方に振り向くと、次の瞬間。
ピ…!
廊下からものすごい爆発音が響き、遅れて轟音が炸裂する。
そして、黒い人影が爆風とともに天井を貫いて飛んで行った。
「ぎやァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
澄んだ青空の中、一人の少女だけの声が学園中に木霊していく。
「アホだ」
その光景を呆れながら眺めていた、薄紫色の髪をした少年がそんなことを呟いた。
「あいつ、自分の仕掛けた罠に嵌まりやがった。」
額に手を当てる彼を余所に、他の者たちは何事もなかったかのように全員揃って無視。
伸ばした手をいったんひっこめる茶髪の少女は、確認を取るような口調でまた話し始める。
「ここに入るには合言葉が必要なの。さっきまで話し合っていたのはこのことだったんだけど…まぁ、いいわ。今回の話し合いでは決まりそうもなかったことだし、新しい合言葉は無かったことにする。えと、つまりここは対アンドロイド用の作戦本部と言うわけ。」
少年は後ろから聞こえた少女の声にまた振り返ると、彼女はそれを見計らいまた言葉を続ける。
「ここ以外に安全に話し合える場所などないわ。」
少年の心がまた揺らぐが、彼はまだ迷ったままだ。
「す、少し時間をくれないか?」
「ここ以外でならどうぞ。」
痛いところを突かれてしまった。
今度こそ、少年は選択しなければならない。
「ッ…!!」
「うん?」
彼は少し考えると、閉じた口を無理やり開けた。
精一杯の声が、胸の中で込みあがる。
「OKだッ!!」
彼がそういった瞬間、周りのピリピリとした空気が一斉に緩み始めた。
所々で小さな歓声が上がり始め、部屋中に笑顔がはびこる。
「合言葉を」
少年が言うと、彼女はゆっくりと手を伸ばしながら彼に歩み寄った。
「反逆者に栄光あれ」
彼女は笑顔でそう言うと少年と握手を交わす。
「私はあすか。このチームのリーダーよ。」
De-tao-ba-araibu12 end