小説『データ・オーバーアライブ』
作者:いろは茶()

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お互い力強い握手を交わした後、少年はまぶしい日差し背にしてしばらく周囲を見渡していた。

見れば見るほどこの世界には変わった奴らしかいないのか、と嫌でも疑問を抱いてしまう。

覇気のない顔で天井を眺めている少年のどこか力が抜け切ったような様子に気付いたあすかは話が白けてしまったのか、それとも会話のテンポが遅いのかと考えを巡らせた結果、周りの仲間達に合図を送る。

周りのメンバーはあすかの合図に気付いたのか、皆が全員暗黙の了解をしてこくりと頷いた。

(今から簡単に自己紹介を始めるわよ!各自面白いネタを考えておきなさいッ!!)

彼女が合図を送った直後、木刀を持って暇そうにしていた男の顔がにやりと凶悪な笑みを浮かべる。
腰を落とし、「待っていましたっ!」と言わんばかりの勢いで刀を構える男は、最後に狂犬の如き絶叫をした。

「OK!分かったぜ、あすか!今すぐあいつを始末してやるっ!!って、ブゴォッ!?」

彼がそう言い終わるや否や、木刀男の顔面に少女の鉄拳が飛ぶ。

バコッ!鈍い音が部屋中に広がって、なんとなく天井を眺めていた少年の意識が変人達に戻る。

あすかは「ぜぇ!ぜぇ!」と息を切らして憤慨すると、床に転がってのた打ち回る男にプイッ!と背を向けてしまった。

それでも上の空状態だった少年の目には映らず、ただ彼は別のことを考えていた。

(抗うって言う選択肢か…くそっ、俺はどうしたらいい!こいつらと本当にあのロボットと戦えっていうのか!?)

だが、そんな彼の不安を余所に咳払いをした少女は改めて少年にこう切り出す。

「…えと、今からチームメンバーの紹介をするわ!」

突然周囲からは安息の声が上がり、「なんだ良かった〜」「またあれをするのかと思ったぜ」と全員合図の意味を全く理解できていなかったことが見て取れた。

少年は苦笑して、こくりと頷く。

「ああ、頼む。」

その言葉を聞いて満足そうに笑ったあすかの姿を見て、少年はふと、思った。

迷いが消えたわけではない。この選択がどの道に続いているかなんてわからない、

でも―――

彼女の悲しむ顔は見たくないな、と彼はそう感じてしまうのであった。

De-tao-ba-araibu13 end

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